スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

野生の樹木園/マーリオ・リゴーニ・ステルン

野生の樹木園
マーリオ・リゴーニ・ステルン

My評価★★★★

訳:志村啓子
みすず書房(2007年6月)
ISBN978-4-622-07300-0 【Amazon
原題:Arboreto Salvatico(1991,1996)

目次:一九九六年版によせて/はじめに/カラマツ/モミ/マツ/セコイア/ブナ/ボダイジュ/イチイ/トネリコ/カバノキ/ナナカマド/クリ/オーク/オリーヴ/ヤナギ/クルミ/ポプラ/リンゴ/カエデ/クワ/サクラ/訳注/訳者あとがき


イタリア北東部、プレアルプスといわれるアジアーゴ高地に暮らす作者が、身の回りにある20種の樹木について、生態や歴史・神話・加工品などの利用法・薬用などについて語るエッセイ。初版は1991年。訳出の底本は1996年版で、『一九九六年版によせて』では、本書執筆の意図やタイトルの想いなどについて触れている。

二度の大戦を経た高地。著者は第二次世界大戦後に帰還した故郷で、戦禍の爪跡生々しい荒れ果てた土地を目にした。高地を蘇らさせるべく、木を植え始めた。そして木と孫たちの成長を目にし、身辺にある木々について書くことを思い立ったという。
本書を読むと、古代ギリシア以来からの樹木と人間の関係、人間がいかに樹木に生活の多くを負ってきたか、ということが真っ先に浮かぶ。木材以外にも多様な利用法があり、生活に密着している。樹木は人間の最も身近にあり、最も活用されてきた資材・素材だということがわかる。
なかでもメディカルハーブとしての利用法では、「この木にこんな薬効が信じられていたのか」と、多様な薬効が記されている。そうした薬効を発見した人間の知恵の深さを知らされた。
マツの幹からは、紙の原料にするセルロースが採れるという。セルロースは植物から採れるとは知っていたけれど、マツからも採れるとは思わなかった。カバの樹皮はタンニンとグリコールを含むのだそうだ。いまでは化学的に抽出されているが、鎮痛剤(アスピリン)の成分のサリシンは、ヤナギ(西洋白柳)の葉と樹皮から発見されたのだそうだ。
意外にもヤナギの活用法は多い。ポプラには「白いホプラ」と「黒いポプラ」があるそうで、樹皮はタンニンとサリシンを含むという。またボダイジュの花にも薬効があるそうだ。仏陀はボダイジュの下で悟りを開いたと言われているけど、この薬効によるんじゃないだろうな。
こうした樹木に、人間はどのような想いを抱いてきたか。日本を含む多くの神話や伝説に語られているように、敬虔な気持ちを抱いていたという。

著者は自らの戦争の記憶を交えながら、身近な樹木について語る。高地で育った著者にとって、樹木は日々の生活に密接したものなのだろう。本書を読んでみると、薬効や木材の性質や活用法、食用果実といった様々な恵み、その生命力の強さから、神話や伝説・伝承に結びついたのだろうと想像させれる。
だが、単に樹木を賛美しているのではない。樹木が失われてゆくことに、警鐘を鳴らしているのだ。
ひとたび戦争となれば森林は失われる。また、開発という名の下に失われてゆく。資源は無限ではない。いつかは無くなる。一旦失われた樹木と森林は、容易には元に戻らない。数百または数千年経て成長するため、人間のタイムスパンで計ることはできない。
私はいちばんの問題点は、現代の都市化された生活では樹木の恩恵を実感することが困難だから、その有用性が理解されにくいため、人々が樹木に関心を持たなくなったことにあるのではないかと思うのだが。(2007/9/12)

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

H2

Author:H2
My評価について
=1ポイント
=0.5ポイント
最高5ポイント

最新記事
カテゴリ
最新コメント
最新トラックバック
FC2カウンター
検索フォーム
リンク
QRコード
QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。