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砦/モリー・ハンター


モリー・ハンター

My評価★★★★☆

訳:田中明子
カバー画:坂元朋子
評論社(1981年)
ISBN4-566-01141-0 【Amazon
原題:THE STRONGHOLD(1974)


スコットランド北部のオークニー諸島の島々は、ローマ人による度重なる奴隷狩りに甚大な被害を蒙っていた。オークニー諸島には何部族かあるが、もっとも勢力のある猪部族ですら、ローマ軍の武力の前には辛酸を舐めていた。
族長のネクタンは部族民が生きる道として、ローマ人の襲撃があったときは逃避するという方針を掲げる。だが、ドルイドの祭司ドムナルは討ち死にしても戦うことを要求。ネクタンとドムナルは対立するが、そのとき島にタランという男が漂着する。

ローマ軍によって幼少時に片脚が不自由になったコルは、ローマ軍から身を守りつつ攻撃のできる砦の設計を考えていた。この砦を造ることでネクタンとドムナルの双方の意見を満たし、二人の不和を解消できると確信していたのだ。
だがタランの策略によってドムナルが優勢になるにつれ、ネクタンは族長として危機に陥る。コルは次期族長のニアルとともに、タランの陰謀を阻止しようとする。しかしネクタンはタランの奸計に陥る。
そしてベルテーンの火祭りがやってきた。

********************

古代ケルトの砦ブロッホの建立の経緯を、作者なりに想像にした歴史ロマン。児童書扱いですが、大人が読んでも遜色ない骨太な作品でした。

オークニー諸島の島々には、紀元前1世紀の中頃から末頃に造られた「ブロッホ」という石の砦が500箇所にもあり、誰がどういう目的で造ったのか謎なのだそうです。
作者は想像力によって、コルという若者とその部族が砦を建造するに至った経緯と、彼らが生きた時代を描き出します。
それはローマ軍の侵攻に脅えながらも、部族とケルト信仰を守ろうとする人々の姿。
過酷な自然環境では、人は信仰をもたなければ生きていけないのでしょうね。けれども信仰が慣習となってそれに囚われてしまったら、いつしか部族は衰退する。そんな状況を打破するには意思の力の他に、若々しい漲った生命力が必要なのかも。
若さゆえに突っ走るのではなく、各人が己が責任を果たしており、そうしなければ生きることのできなかった時代。人々が生きるためには、未来を思い描くビジョンが必要なのでしょう。
コルは自分の夢を実現した若者ですが、彼も生きるためにピジョンを必要としているんです。こういうところが、私にはとても人間らしい姿だと思われるんですよ。

ケルトの宗教はともすると魔法色の強い宗教と思われがちですが、実際には魔法というものではなく、ドルイドは魔法使いではないし、祭司といわれる存在とも違うようです。
そもそも作中では魔法そのものは重要な要素ではないでしょう。ですが注目したいのは、ドルイドが魔法を現出させるときの強烈な感情。感情というより、生命力の迸りという印象。人間の内なるエナジーから発せられるかのよう。
突き詰めていくと、この作品は人が本来持っている「生命力」に焦点が当てられているように思うのです。(2001/6/18)

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お返事遅くなってすみません

★履歴書の書き方さん
ご訪問ありがとうございます。
モリー・ハンターは結構骨太な物語を書く人で、ジャンル的にはサトクリフに近いかな。でもサトクリフとは違う作風でした。
ハンターの本はたぶんすべて絶版だと思うのですが、図書館にはあると思います。
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