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スムヒの大冒険/アモス・オズ

スムヒの大冒険
アモス・オズ

My評価★★★☆

訳:村田靖子
未知谷(1997年7月)
ISBN4-915841-54-5 【Amazon
原題:SOUMCHI(1978)


空想好きな11歳の少年スムヒ(あだ名)の一日を、回想的に綴った物語。
空想といっても突飛なことではなく、ここではないどこかに行くことを夢みたりと、子どもだけではなく大人をも含めて、誰もが一度は夢みたことがあるようにこと。

好きな女の子エスティーをいじめるスムヒ。
スムヒはおじさんから自転車をもらい、自転車に乗ってアフリカやヒマラヤ、「オバンギ・シャリ」にあるザンベジ川の源に行くことを決意する。その前に友だちのアルドに自転車を見せたら、アルドの持っている汽車と機関車と3メートル分の線路と交換してしまう。
帰り際にゴエルと会ったスムヒは、無理矢理に機関車を犬と交換させられる。しかし犬は逃げてしまい、スムヒの手に残ったのは拾った鉛筆削りだけ。
夜分に帰宅したスムヒは父親に怒られて家を飛び出す。途方に暮れていたスムヒはエスティーの父親と出会い、彼の家に泊めてもらうことになった。

********************

好きなのにいじめてしまい、自分からは好きだと言えない、周囲の囃しに憤然とするスムヒ。自転車や機関車に目を輝かせたり、未知の地を夢みる少年。
利口ではあるがいじっぱりで、臆病だけどちょっとの狡さに、「そうそう、そういう気持ちだった」と、とても共感がもてました。初めて見た女の子の部屋にドキマギしたりと、誰もがどれか一つぐらては少年時代の思い出と重なる部分があると思います。
「オバンギ・シャリ」がどんな場所なのか知ったときには、スムヒがいじらしかった。

スムヒの一日は『わらしべ長者』のような展開をしていきます。といっても結末は正反対ですが。
この作品は冒頭の章で回想だというのがわかり、これが非常に重要なポイントになるんです。回想なのだけれど、格別突飛で愉快な出来事だけを綴っているというわけでもありません。ごく普通の少年時代の生活の一部を綴っているのだと思います。普通に生活するということの大切さを、今に生きる私たちに伝えているような印象を受けました。過去に捉われるのではなく、今生きる人々に向けて書かれた作品だと思います。
その筆致には、感傷やペシミズムは感じませでした。郷愁や悔恨も感じなかったですね。非常に淡々としているように感じました。淡々と感じるのは、感情の律し方が上手いでしょう。
それはユダヤ人であることと、エルサレムという特殊な場所のためなのかあ。

作者はイスラエルの現代作家で、エルサレム生れ。時代背景は第二次世界大戦後にイギリス委任統治領となった、1940年代のエルサレムの一角。詳しくは訳者あとがきを。
作中ではチラリとのぞくだけなのですが、イギリスへの憎悪に近い感情を持つ人々がいることが知れます。と言っても格別シオニズムではなさそうな。政治色や宗教色はあまり感じませんでした。
イスラエルというと統治権問題、宗教問題、領土問題、戦争、難民のことなどをニュースで知るぐらいなのですが、何かと問題が絶えない国というイメージがあります。そのような国に、こんな作品を書く作家がいるということが、ちょっとした驚きでした。(2001/8/5)

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まとめ【スムヒの大冒険/アモ】

スムヒの大冒険アモス・オズMy評価★★★☆訳:村田靖子未知谷(1997年7月)ISBN4-915841-54-5 【Amazo

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