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一杯の珈琲から/エーリヒ・ケストナー

一杯の珈琲から
エーリヒ・ケストナー

My評価★★★☆

訳:小松太郎
創元推理文庫(1975年9月)
ISBN4-488-50803-0 【Amazon
原題:Der kleine Grenzverkehr(1938)


1937年夏、ドイツのベルリンに住むゲオルクは、祝祭記念興行中のオーストリアのザルツブルクで、夏の休暇を過ごすことにした。
ところが旅券は下りたものの、為替管理局に申請した許可が下りず、ドイツマルクを持ち出すことができない。特別な許可がなければ、月10マルク以上持ち出せないのだ。

ゲオルクはドイツ側のライヘンハルに宿泊し、毎日バスで30分間揺られて国境を越え、ザルツブルクへ通う。食事と宿泊はドイツで、オペラはオーストリアで。
しかし10マルクは早々に使いきってしまい、ザルツブルクでは一文なし。友人の画家カールに頼るしかない。
ところがある日、待ち合わせのカフェにカールが現れないため、コーヒー代を払えない破目に・・・。困ったゲオルクは、居合わせた美女コンスタンツェに助けを求める。
彼女は伯爵家の女中だと言う。伯爵の家族は旅行中で、留守宅を祝祭記念興行期間だけ、金持ちのアメリカ人に使用人ごと借しているというのだ。
二人は毎日会うようになり、互いの気持ちを深めてゆく。友人のカールは、彼女は女中ではないと言いだした?!

********************

エーリヒ・ケストナー(1899-1974)、第二次世界大戦前後に活躍したドイツの作家・詩人。1960年、第3回国際アンデルセン賞受賞。
革職人の息子としてドレスデンに生まれ。ギムナジウム時代に第一次世界大戦に召集。ライプツィヒ大学で学んだ後、ベルリンに出て詩人として認められる。
ナチス・ドイツ政権下では、父方がユダヤの血をひく家系であるため、一部の児童書を除いて禁書・焚書・執筆禁止など苦渋の時代を送ったそうです。本作はスイスで出版。終戦まで、外国での出版を含む完全な執筆禁止令が下されたという。

児童文学で著名なケストナーですが、本書は大人向けのユーモア小説。
風変わりな研究に勤しむゲオルクが、音楽の都ザルツブルクで恋に落ちた!その出会いも風変わり。相手のコンスタンツェは女中をしていると言うが、本当は・・・。
軽妙で洒落た喜劇風のロマンスといった感じでしょうか。恋愛ものが苦手な私でも愉しめました。ヴァカンスで読むのがピッタリな小品。

第二次世界大戦の前年にスイスで刊行された作品で、訳者あとがきによれば、ナチス・ドイツ下では禁書だったそうです。
時代設定は1937年ですが、本書を読むと当時のドイツとオーストリア間では、頻繁に行き来があったように思われるのです。
表立って政治的な事柄は書かれていないのですが、両国ではドイツ語の方言も服装も、親切心や友愛の情も何ら変わるところがないんですよね。とすれば、国境とは何なのか、ということを考えざるを得ません。
また、金持ちのアメリカ人でもルールを守り、相手を尊重します。言語や人種にこだわらず、相手を理解し交流することができるということですよね。ナチスに目を漬つけられるほど、優れた作家だったのですね。

訳者の小松太郎は1900(明治33)年生まれ、1974(昭和49)年歿なので、初訳はいつ頃なのかな。ともかく訳語が古い。たいした問題ではないでしょうが、特に気になったのは以下の2点。
原文がどうなっているのかわからないけれども、会話は内容からすればもっとウイットさがあるんじゃないかと思うだけれど。
もう一点は言葉。話し言葉は階級によって異なります。くだけた感じにしたかったのでしょうが、この人物がこういう口調で話すかなあ。人物の性格及び社会的身分に、言葉遣いが合っていません。私としては、そろそろ新訳をが出ないのかな、と思うのですが。(2007/9/27)

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