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西瓜糖の日々/リチャード・ブローティガン

西瓜糖の日々
リチャード・ブローティガン

My評価★★★★

訳:藤本和子
河出書房新社(新装版,1979年11月)[絶版]
コード不明 【Amazon
原題:In Watermelon Sugar(1964)


アイデスでは工場で西瓜から砂糖を採る。西瓜の色は様々で月曜日は赤い西瓜、火曜日は黄金色の、水曜日は灰色、木曜日は黒色の無音の西瓜。金曜日は白色、土曜日は青色、日曜日は褐色。
これらの西瓜糖から西瓜糖の板や橋、窓、ドレスなど様々な物が作られる。砂糖以外に西瓜鱒油や西瓜種子のインクなども。川床には墓が造られ、薄明かりを放っている。時折り堂々たる長老鱒が姿を現す。

アイデスの近くに住む私は本を書いている。私が書くのはアイデスのこと。アイデスで本が書かれるのは35年ぶり、171年間で24冊目となる。
私には名前はない、すべてが私の名前となるから。私が幼いころのアイデスには、綺麗な声で歌う虎たちがいた。虎たちは人間を喰らうので狩られ、最後に虎を狩った場所に鱒の孵化場が造られた。

食事はアイデスで摂る。料理を作るポーリーンと私は恋人同士。しかし、二人の間にはマーガレットの存在がわだかまっていた。
私は以前にマーカレットとつきあっていたが、彼女は皆が行きたがらない<忘れられた世界>へ頻繁に赴き、忘れられた世界にある物の蒐集を趣味としている。私にはマーガレットが理解できず、彼女を疎ましく思い避けるようになった。マーガレットはその奇矯な行動ゆえに、アイデスの住人と疎遠になってゆく。

アイデスを非難したインボイルは、<忘れられた世界>の入り口で暮らすようになる。彼はいろいろな物を掘り出して、ウィスキーを醸造して飲んだくれる。彼のもとにウィスキーを飲む男たちが集まる。
インボイルはアイデスの住人はアイデスをわかっちゃいない、アイデスがどういうものか見せてやると、凶暴に笑ってうそぶく。インボイルを知る人たちは不安な面持ちになる・・・。
ある日、インボイルは一団の男たちと共に、アイデスがどういうもののか見せてやると、食堂にいた私たちを引き連れて鱒孵化場へと向う。

********************

アイデス(iDEATH)というコミューンで平穏に暮らす人々を描いた寓話的物語。
名前のない主人公によって、アイデスの日常生活が語られます。アイデスは西瓜糖を主原料とするファンタスティックな村。ふんわりとした雰囲気があり、奇妙で不可思議な物語。こういう雰囲気好きです。
ちなみにアメリカの西瓜は日本のバスケットボール形ではなく、ラクビーボール形をしており、両端がズングリと丸みを帯びているそうな。

作者の真意はわからないけれど、これだけシンボル・イメージやアレゴリーが鏤められているということは、何かを意図していると考えるのが自然では。
アイデスはいわば一つの完結した閉塞的な世界。そこは「アルカディア」といえるかもしれません。人々は自らこの世界に留まる。
しかしアイデスは活力を失い停滞し、序徐にしかし確実に衰退へと向っているんですね。それは住人が虎を抹消してしまったから。虎は殺さない方がよかったのだ。
さらに人々は人間としての叡智を失っている。一縷の希望が主人公宛てに託されていると思うのだけれども、主人公がそのことを認識しているかどうかハッキリしない。

主筋はアイデスの理念と反する行動をとるインボイルとマーガレットが引き起こした事件だが、二人がとった行動の理由はハッキリとは明かされません。でも、この二人こそが虎の末裔なのでしょうね。
インボイルは自らの身でアイデスが間違っていることを証明しようとするが、住人たちには伝わらないことから、事態はかなり深刻な様子。

一見ファンタスティックでストーリーらしいストーリーがなく、未完の物語のようにも思われるのです。実際にこの物語は完結していない。なぜなら現在進行形で書かれた物語だから。
この作品は、アイデスという世界と住人の特質を描いた物語。拡大解釈すれば、この病んだ現代社会に生きる人々の生態を風刺した物語と言えるような。そういうふうにこの物語を読むと、案外に完成度が高いように思いました。(2002/3/8)

追記:2003年7月、河出文庫にて復刊【Amazon】。

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