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バルザックと小さな中国のお針子/ダイ・シージエ

バルザックと小さな中国のお針子
ダイ・シージエ

My評価★★★☆

訳・解説:新島進
早川書房(2002年3月)
ISBN4-15-208405-7 【Amazon
原題:BALZAC ET LA PETITE TAILLEUSE CHINOISE(2000)


1971年、文化大革命期の中国。幼なじみで高名な歯医者の息子・羅(ルオ)18歳と、医者の息子の僕17歳は、中学の教育さえままならなかったのに知識青年の反革命分子とみなされて、再教育のために農村へ送られた。
僕たちは険しい山奥で厳しい労働に従事するが、ときには町へ行って映画を観ることができた。観てきた映画の内容を、村人たちに面白おかしく語るためだ。

僕たちは谷を隔てた村の仕立屋の娘・小裁縫(シヤオツアイフオン)と知り合い、羅と小裁縫は恋仲になる。
僕たちは、別の村で労働に従事している作家の息子・メガネを助け、彼が鞄に隠している本の中から『巴爾扎克(バルザック)』を一冊借りた。
羅は小裁縫にバルザックを読んであげて、彼女をあか抜けた教養ある女性にしようとする。羅が本を読んであげたことによって、小裁縫は変わっていったが・・・。

********************

『解説、および著者へのインタビュー』によると、ダイ・シージエ(戴思杰,Dai Sijie)は1954年、福建省生れ。12歳のときに文革を迎えて、17歳のときに山で再教育を受けた。現在はパリで映画監督として活躍中。この作品はフランス語で書かれフランスで出版されたそうです。

主人公の僕は、自分とは対照的な性格の羅を崇拝し、小裁縫に密かな恋心を抱きつつ、羅と小裁縫の仲を取り持つ。小裁縫は本から知識を得たことによって、自分の可能性を考えるようになるのです。そんな三人の若者の物語で、文革がどういうものか知らなくてもサラリと読めました。
この作品は文革の時代を扱いながらも、文革を弾劾したり清算しようとするのではなく、僕と羅と小裁縫の青春小説だと思います。そのためか、文革の悲惨さが薄れてしまったかのような。
文革を扱いつつもサラリとしたところがもの足りないけれど、こういった小説を書く作家が現われるとは、中国の小説が変わってきているのかも。もっともこの原書はフランス版だけれど。

僕と羅が文革でどんな扱いを受けることになったか、当時、村はどんな状態だったのかということがわかる物語でした。文革によって人々がいかに知識や情報、娯楽に飢えていたかが、村の様子や小裁縫を通じて窺うことができるようです。
文革以前の中国にバルザック他ヴィクトル・ユゴーや、スタンダール、デュマ、フロベール、ポードレール、トルストイ等々の中国訳の本が流通していたんですねえ。
それらの本が文革によって、全て禁書になるとは!それよりも主人公と羅の医者の両親までが、有産階級・学術の権威として反革命分子とみなされるとは!!
知識を探究することが禁止されてしまったら、技術的な発達も限られてしまい、国が発展せず衰退してゆくのに。重病になっても医者にかかることができないんですよ。いったい毛沢東は何を考えていたのだろう。
だが、それを支持する人々が当時はいたということが、何よりも理解し難かった。(2002/7/1)

追記:2007年3月、ハヤカワepi文庫化 【Amazon

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