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白い盾の少年騎士/トンケ・ドラフト

白い盾の少年騎士
トンケ・ドラフト

My評価★★★★

訳:西村由美,挿画:トンケ・ドラフト
岩波少年文庫,上下巻(2006年11月)
上巻:ISBN4-00-114577-4 【Amazon
下巻:ISBN4-00-114578-2 【Amazon
原題:GEHEIMEN VAN HET WILDE WOUD(1965)


『王への手紙』の続編だけれど、本書から読んでもさほど支障はないんじゃないかな。
ダホナウト王国の最年少騎士になった少年ティウリ。春になり、以前にリストリディン騎士に招待されていたティウリは、友人で盾持ちのピアックと共にリストリディン城へ赴く。城にはすでに他の騎士たちが集まっていた。その中に、ひと際異彩を放つ騎士がいた。指にはウナーヴェン王の信頼の証しである、あの指輪が嵌められていた。彼は何者なのか?
だが、肝心のリストリディンが現れない。リストリディンは冬の間、ダホナウト王から命じられて「野生の森」を調査していたという。その後イスラン城に立ち寄ったという知らせがイスラン城主からもたらされたのだが、そこで足どりが途絶えてしまった。リストリディンはどこにいるのだろう?ティウリはリストリディンの足跡を追って、イスラン城へ向かう。そして城主の娘イサドーロ姫の不可解な言動に翻弄される。

ティウリは森でマリウスと再会するが、マリウスは赤い盾の騎士たちから逃げてきたという。ティウリは、マリウスを森の小屋に連れ帰ろうとする。マリウスは、野生の森の中でリストリディン騎士を目撃していた。その現場に向かったティウリたちは、野生の森の秘密に触れる。
野生の森で暮らすみどりの男たち。森には、みどりの男たちを統べる「野生の森の主人」がいるという。その森でエヴィラン国による新たな陰謀が進行していた。そして、ついにウナーヴェン王国の皇太子と、エヴィラン国王が決戦の時を迎える。

********************

前作よりもスケールアップして、様々なナゾや陰謀が展開する。前作に登場したアルディアン騎士はじめ、ラヴィニア姫も意外な方法で出現。そして、前作ではナゾのままだった赤い盾の騎士の正体が、ついに明らかに!
結構なボリュームだけれど、前作同様、読む者を最後まで惹きつけるストーリーテラーぶり。いやあ、面白かった。面白おかしいというのではなく、たんなる冒険物語と違い、読後にズンと胸に響く深みのある物語だった。

冒険を求め、放浪の騎士となることを夢みる少年騎士ティウリ。自らの判断を信じ、信義を重んじるがため、彼は否応なく事件に巻き込まれてゆく。だが、現実は苦い。ティウリは命の遣り取りに、痛みや苦しみを感じる。中途となったチェス対局が、いつまでもティウリの頭を占める。答えの出ない問い。
ティウリは皇太子に、自分がよいと思って行動してきたことが、全然よくないと感じることがあると告げる。皇太子は、「悪と戦うときでも、自分自身を許せない責めを負うことがありうる。それはしかたがない。どうしようもないことなのだ。」(下巻p306)と語る。
例えばヤロは、自軍が正しいとは思えずに離反するが、だからといってウナーヴェン側に立って戦闘に参加することを望まない。彼にとってそれは裏切りになるからだ。私はヤロは理解できるな。彼が狡いとは思わない。彼にとって精一杯のことをしたのだと思う。人はそんなに簡単に割り切れるものではない。善悪もだ。そんな微妙な彼の機微に説得力を感じる。

戦争は、負けた側はもちろんだが、勝利した側にとっても不毛さが残される。しかし、それでも人は生きていかねばならない。責めを自ら負いながらも、それを乗り越えて。読後には命の重みや、連綿と続く生命の営みといったことを思った。ラストにおける生命の営みの代え難さ、それこそが救いなのだと思った。こうした深みや説得力は、やはり彼女の第二次世界大戦中の経験からきているのではないかと思う。(2009/4/14)

王への手紙

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