スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

歌々版画巻/谷崎潤一郎+棟方志巧

歌々版画巻
谷崎潤一郎+棟方志巧(版画)

My評価★★★☆

中公文庫(2004年6月)
ISBN4-12-204383-2 【Amazon


谷崎潤一郎(1886-1965)の短歌と棟方志巧(1902-1975)の版画によるコラボレーション。巻末に対談『歌々版画巻をめぐって』を収録。 1957(昭和32)年に宝文館から刊行された本を復刊したもの。
柄にもなく短歌の本。谷崎潤一郎が短歌を作っていたなんて知らなかったのに。棟方志巧の版画を見たくて手に取ったのです。正直に言って、短歌(俳句も)はわからないので何とも言えないのですが、気に入った歌は何首かありました。そのうちの二首が以下。

やまざとは桜吹雪に明け暮れて花なき庭も花ぞちりしく

柿の実の熟れたる汁にねれそぼつ指の先より冬は来にけり


はじめの歌は桜の花片が、庭をはんなりと薄紅に染めている情景が浮かんできて、いかにも山里という感じを受けました。
「花なき庭」というところがいい。いつもは花のないさびしげな庭が、桜の散る季節だけ華やかに装われる。その装いは一瞬の時季だけであり、永続的なものではない。「儚さ」と言うのだろうか、限定された時間(期間)での美しさを表しているところが好きです。

次の歌では「指の先」と限定しているところが、初冬間近の冷たい外気温を想像させられました。
小さい頃、親戚の家へ毎年柿を取りに行っていたのだが、外気温が低いため、実はかなりジットリとしていて冷たかった。木で熟した柿の実の冷たさなんて今までスッカリ忘れていたのだが、この歌で懐かしく思い出したんです。
他に人工衛星の歌もあって、時代を感じさせますね。人工衛星の実物は見たことはないけれど、普段意識するものではないから歌になるとは思わなかった。

肝心の棟方志巧の版画ですが、できれば単行本などの大判で見たかった。
巻末の対談で棟方の制作や創作について知ることができるのですが、墨の部分は本当はわざとムラにしているのだそうです。でもそのムラが文庫だからか印刷技術のためか、まったくわからないんですよ。ベタにしか見えない。それが非常に残念でした。

版画には谷崎の歌も彫られていて、歌によって文字の線を変えているのだそうです。棟方は字も絵のうちだと言う。
なるほど、よく見れば力強い字もあれば、瀟洒な感じのする字もある。歌によって字の表現が全然違う。字も含め、全体としてデザイン性が凄いなあと思います。ときには大胆な構図をとっている画もあって斬新。

対談では、両者とも鏑木清方(日本画家)の絵を褒めているのがうれしい。好きなんですよ、清方。棟方は、清方の絵には「静けさ」があると言う。そうそう、そうなんだと納得。(2004/11/29)

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへにほんブログ村 本ブログ 海外文学へ

スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

H2

Author:H2
My評価について
=1ポイント
=0.5ポイント
最高5ポイント

最新記事
カテゴリ
最新コメント
最新トラックバック
FC2カウンター
検索フォーム
リンク
QRコード
QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。