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赤い月と黒の山/ジョイ・チャント

赤い月と黒の山
ジョイ・チャント

My評価★★★★★

訳:浅羽莢子
評論社(1980年4月)
ISBN4-566-01198-4 【Amazon
原題:Red Moom and Black Mountain(1970)


オリヴァ、ニコラス、ペネロピー(ペニー)の三兄弟は、突然、中世風の異世界<ヴァンダーライ>に召喚された。オリヴァは遊牧の民・ケントール人のフルナイ族のもとへ。
オリヴァ、その名は予言にある名だった。オリヴァはフルナイ族からリーヴァンと呼ばれ、剣技やフルナイ族の風習を学んでゆくが、少しずつ自分の家族や世界の記憶が薄れてゆく。オリヴァ=リーヴァンのもとに、炎の色にも似た黄金色の馬『デュルシャイ』(もちこたえる者)がやってきた。デュルシャイは馬の形をしているが、神々の一人だった。
一方、ニコラスとペニーは、気がつくと雪山にいた。二人は通りがかったハラニ人のインセリンナ王女の一行に救われる。二人がいたのは赤い月と銀の月の登っている「黒の山」で、王女は白鷲と黒鷲の群れの戦いを見に来たのだった。大鷲たちの戦いは、来たるべき大きな戦いの前哨戦だった。

インセリンナ王女は星仙術を扱う仙女だった。星仙術を扱えるのは、神々の血を引く九つの一門「星々の子ら」だけ。
かつて、星仙術師のフェンダールは暗黒の者たちと手を結び、黒魔術師の王となって人々を支配した。だが海の彼方への山々へと追放された。そのフェンダールがよりいっそうの力をつけて戻って来たのだ。王女とペニーは敵に捕われ、ただ一人逃れニコラスは、敵の軍勢が押し寄せていることを、注進すべく王国へと向かう。
ニコラスは人間とは異種の『ニハイムル』の住む森に足を踏み入れるが、ニコラスの伝言はニハイムルから風の子らによって、ケントール人へもたらされた。ニコラスは森で出会った『はざかい者』と王国への旅を続けるが、最も古い大地の精霊『ヴァル・ヴァシャル』が、敵によって目覚めさせられたことを目の当たりにする。

********************

重厚な異世界ファンタジー。この作品ではオリヴァことリーヴァンの活躍が主軸となるが、彼以外の人物もシッカリ描かれており、一人ひとりがフェンダールとの戦いで、影に陽にどう関わっているかが知れる。
別世界へ召喚されて活躍するヒーローというのは、この作品が執筆された当時はどうだったかは知らないが、いまでは定番と言えるほどありきたりの設定。しかし、この作品はありきたりの別世界往還ものとはちょっと違う。ヒーローであるはずのオリヴァが支払う代償が、あまりに大きいのだ。オリヴァとインセリンナ王女にみられるように、平和や幸せを手中にするには、何らかの代償を支払わなければならない。誰もが代償なくして一方的に得ることはできない。失うことを恐れては得ることはできないのだ。いまだ幼いペニーは別だが。

だが、平和を得るにも関わらず、最初で最後の戦いとはならない。人間の戦いでもあると同時に神々の戦いでもあるのだから。敵対する神々はキリスト教的だが、全体としてはケルト神話的なムードが濃厚だと思う。
もっともこの作品の優れているところはストーリーより、綿密に構築された<ヴァンダーライ>という異世界そのものにあると思う。作者(1944年、イギリス生まれ)が12歳のときから創ってきた世界だそうで、物語の端々に様々なサイドストーリーが潜んでいて、壮大な構想が伺える。仙術師の起源については、普通ならこれだけで一冊の本になりそうなほど。
なによりそんな広大な構想を支えるだけのリアリティがある。星々の輝き、寒さや空腹さ、人々の感情といった描写力はもちろんだが、なによりもヴァンダーライという世界を維持し機能するための、ルールなり法則がシッカリ考えられている。
例えば狩猟民族であるケントール人のフルナイ族では、必要量以上の狩りを禁じている。その禁を破った者は重い罰を受けなければならない。これは狩猟民族であるからには当然のことだろう。仙術師にも掟がある。そういったルールがキチッと考えられている。人間にはわからないが神々にも制約やテリトリーがあり、神だから何でもできるというわけではない。
魔術師も同じだ。そういった制約なり法則・ルールが考え抜かれ、世界設定という土台がシッカリしているからこそ、描写力が生きてくるのではないだろうか。

訳者あとがきによると、この作品はヴァンダーライの年代記というべきもので、第八作目の構想はすでにあるという。本書は処女作で、以下順に
『The Grey Mane of Morning』(暁の灰色のたてがみ),1980年に上梓。ケントールの英雄モルアンを主人公とし、ケムナン神と人との結びつきを通じて、ケントールの民族としての自覚を描いたもの。未訳。
『The Story of the King’s Emerald』(王のエメラルド)。本書が刊行された当時執筆中。
2作目の『暁の灰色のたてがみ』が翻訳されるといいのに。(2004/6/3)

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お久!

H2さんご無沙汰してます。
おっと、知らぬうちについにお引っ越しですか。HPは味があるんですけどねぇ‥色々な形を試して楽しい感想をお書き下さい。
生きてますよ何とか。本もちゃ~んと読んでいます。拙サイトは未読山のプレッシャーでつぶされてしまったけど(小心者)、またあんなのをしたい気になるのを気長に待ってるとこです。今年は最低の読了数で終わる感じ。でもまぁそういう時期があってもいいですよね。12月も半ば過ぎ、駆け込み読書にいそしみませう。

No title

★おはなさん
おおー、お久しぶり!元気ですか?

パソコンがクラッシュして修理したんだけど調子が悪く、HPを更新できなくなったのと、いつまたパソが壊れてもデータに影響がなく更新できるようブログにしたんです。いまは少しずつデータ移行中。
データベースとしてはHPの方がいいんですけどね。

読みそびれていたのを、駆け込み読書したいんたせけど・・・。今月と来月は、本を読む余裕がないんです~(しくしく)。
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