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レクイエム/アントニオ・タブッキ

レクイエム
アントニオ・タブッキ

My評価★★★★

訳:鈴木昭裕
白水社(1996年5月)
ISBN4-560-04591-7 【Amazon


ついさっきまでアゼイタンの農園で休暇を過ごしていた私は、樹の下にあるデッキチェアに横になって本を読んでいた。月最後の暑い日曜日。記憶のなかに存在する人に会うには申し分のない一日。
気がつくと私はリスボンアルカンタラ桟橋で、あの男を待っていた。男は20世紀最高の詩人だが、亡くなってから随分経つ。しかし男は約束の時間に現れなかった。どうやら時間を間違えたらしい。

********************

約束の時間まで公園で足の悪い宝くじ売りと話したり、汗だくになったシャツの替わりを購入するためタクシーの運転手に、ジプシーの露店市へと案内してもらう。
ジプシーのお婆さんに占ってもらい、浄化のあとは自分と折り合いがつけられるようになるだろうよと言われる。そして亡き友や彼女、父親と再会。また、かつての下宿先に向かい、好な絵を観るために美術館を訪れる。
食事をしカクテルを飲み、絵を見る。模写画家や物語売りの話に耳を傾ける。
そうして慌しい一日を過ごした私は、一日の最後に男と出会う。

けだるい夏の昼下がり、海辺のコテージでデッキチェアに横たわって読みたくなる本でした。
片手には、国立美術館のバーテンダーが作るカクテル『緑の窓の夢(ジャネーラス・ヴェルデス・ドリーム)』だね。
夏の陽射しに温まったプールの水面で、ゆらゆらと揺られているような不安定さと安心感に包まれているかのよう。すると7月最後の日曜という不規則な時間の流れのなかで、カジミーロの店でサニブーリョを食べながらレシピを聞いている私がいる。私は登場人物としての主役であり作者であり、本を手にしている読者である。
揺らぐ視点、揺らぐ世界、そのなかで真実とはなんだろう。真実も揺らぐかのような・・・。

私は物語の主人公となってあちらこちらを移動する。会いたかった人に会い、聞けなかった答えを聞き、見たかったものを見る。すると一枚一枚薄皮を脱ぐように、悔恨や自分自身だけにとっての虚構で作られた真実を脱ぎ捨てていく・・・。一枚脱ぐごとに、なんて軽々となれるのだろう。

国立美術館での模写画家との会話が興味深かったです。
画家は『聖アントニウスの誘惑』の細部の一部分を拡大模写するのですが、拡大することによって、本来とはまったく違う絵になるという。要するに見方なんですね。それはこの作品世界にもあてはまると思います。
作中で名前を明かされない詩人はフェルナンド・ペソア(1888-1935)。作者はこの詩人に特別の思い入れがあるらしく、訳者あとがきによるとペソア論なるものを著しているそうです。ペソアとは一体どんな詩人なのかな。

おいしい料理と旨い酒は7月最後の日曜という特別な日には欠かせない。たっぷりと料理の場面とレシピが紹介されていて、巻末に作中で紹介される料理の注釈があります。
ちなみに作者が考案した『緑の窓の夢』のレシピはウォッカ4分の3、レモンジース4分の1、ペパーミント・シロップ小さじ1杯。これらを角氷3個と一緒にシェイカーに入れて、腕が痛くなるまでシェイクする。客に出す前に氷を取り出す。するとウォッカとレモンジュースが絶妙に混ざり、それにペパーモントが香りと色どりを添える。まさに涼やかな夏のカクテルではないですか!呑みたい!(2001/3/12)

白水Uブックス(1999年7月刊)【Amazon】も有り。

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