スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

供述によるとペレイラは・・・/アントニオ・タブッキ

供述によるとペレイラは・・・
アントニオ・タブッキ

My評価★★★★☆

訳:須賀敦子
白水社(1996年11月)
ISBN4-560-04615-8【Amazon
原題:SOSTIENE PEREIRA(1994)


ペレイラは以前は大手新聞紙で社会面を担当していたが、 いまは2~3ヶ月ばかり前に発刊されたばかりの小さい新聞社『リシュボア新聞』の文芸編集長(と言っても一人しかいない)に勤めている。
自分では良いカトリック信者だと思っているが、日曜には教会へ行かない。深い理由はなく、たんにサボっているだけだ。

ペレイラはモンテイロ・ロッシ青年を見習い記者として雇った。 だがロッシの原稿は政治色が強く、中立のリシュボア紙では使い物にならないものばかり。
ペレイラは政治に興味がなかった。 だが、ロッシやその彼女のマルタに振り回されながら、スペインでの戦争やフランコを支援するイタリア軍とポルトガルの現状を知ろうとする。

********************

読み始めたときは、これまで読んだ『遠い水平線』や 『レクイエム』にみられるゲーム性の強い作風とかなり異なっていることに戸惑いました。 でも作者特有の軽やかさは健在。
ペレイラの目を通して語られるポルトガルの風景が美しく、一度行ってみたくなるほど。作者のポルトガルへの愛着が感じられますね。

訳者あとがきによると物語の背景となる1938年は、ヒトラーがオーストリアをドイツに併合。
前年の1937年のイタリアでは、スペインの民主主義を武力で制圧しようとして、フランコ軍が市民戦争を起こしている。また同年には日中戦争が起こっている。 つまり世界中が震撼していた時代。
時代背景やあらすじを読むと、アナーキズムな作品と思われるかもしれない。 確かに政治色はあるけれども、この作品で問題とされるのはたぶんイデオロギーではないと思う。

ペレイラは鉱泉療治場や海洋療法クリニックで過ごしたり、新聞に載せる外国の短編を訳したりと、あくまでも政治とは無縁。不満があっても表だって波風をたてるのを嫌う。 やもめで孤独だけど、どこにでもいそうな普通の中年のおじさん。
そんなペレイラが声高々に意思表明や行動を起こしたりするのではなく、 日常生活のなかからと、彼の身に起こった「事件」によって、自分のすべきことをする。
それは彼にとってイデオロギーとかいうものではなく、やるべきことをしただけなのだと思う。おそらく彼はそう言うのではないだろうか。
ペレイラは私の同士は私自身だけです(p75)と言い切る。

政治という問題を高みから見下ろして語るのでなく、日常生活のレベルでペレイラのようなどこにでもいる人物に焦点が当てられています。 そして物語は淡々と進行します。淡々としているからこそ、時代情勢の暗さと根の深さが感じられてなりません。ただ、私はまだ咀嚼できないでいないのですが。
説明するには微妙な問題と作品なので読んでもらうしかないのですが、政治ということを意識しないで読めるだろうと思います。

ペレイラが語る叔父さんの言葉、哲学は、真理のことしかいわないみたいでいて、じつは空想を述べているのではないだろうか。 いっぽう、文学は空想とだけ関わっているようにみえながら、ほんとうは、真理を述べているのじゃないか(p27)は、実に巧い表現だと思いました。

備考:白水uブックスも有り【Amazon】(2001/6/8)

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへにほんブログ村 本ブログ 海外文学へ

スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

はじめまして。

私は「読書ログ」という読んだ本の管理やレビューを書くサイトの運営をしています。

ブログを拝見したのですが、ぜひ読書ログでもレビューを書いて頂けないかと思い、コメント致しました。

トップページ
http://www.dokusho-log.com/

こちらでメンバーたちのやり取りの雰囲気がご覧になれます。
http://www.dokusho-log.com/rc/

読書が好きな人同士、本の話題で盛り上がっています。
もしよろしければ遊びにきて頂ければと思います。

よろしくお願い致します。

はじめまして

★読書ログさん
お返事が遅くなってすみませんでした。
読書ログ、拝見しました。読書好きな方々で賑わってますね!そのようなサイトにお誘いいただき恐縮です。
しかしながら、お気持ちはありがたいのですが、自分自身のブログを維持するだけで手一杯なため(このブログを含めて三つやっているので)、参加できそうにありません。何卒ご理解いただけますよう、お願い申し上げます。

ご返信ありがとうございます。

当サイトを見ていただいたのですね、ありがとうございます。

とても残念ですが、もしよろしければ気分転換にでもサイトをご覧になって頂ければなと思います。

No title

すでにお忘れかとも思いますが、しばらく前、旧ブログにお邪魔させていただきましたaostaです。
たまたま読書ブログを開設されたことを知り、伺ったところ、こちらの記事に遭遇いたしました。
須賀敦子さんの翻訳によるこの本は私の大切な一冊であり、H2さんがどのようお読みになられたのか、ドキドキしながら拝見いたしましたが、ああ、やっぱりと思いを強くした次第です(^^♪
私の過去ブログでも、感想を書いておりますのでお読みいただけたら嬉しいです。

http://follia.at.webry.info/200609/article_34.html
プロフィール

H2

Author:H2
My評価について
=1ポイント
=0.5ポイント
最高5ポイント

最新記事
カテゴリ
最新コメント
最新トラックバック
FC2カウンター
検索フォーム
リンク
QRコード
QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。