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毒杯の囀り/ポール・ドハティー

[アセルスタン修道士シリーズ]毒杯の囀り
ポール・ドハティー

My評価★★★

訳:古賀弥生,解説:大津波悦子
創元推理文庫(2006年9月)
ISBN4-488-21902-0 【Amazon
原題:The Nightingale Gallery(1991)


14世紀のロンドンを舞台とする歴史ミステリー。
エドワード三世崩御後の1377年、10歳のリチャードが王位に就いた。リチャードは亡き黒太子の忘れ形見。エドワード三世の孫にあたる。50年ぶりの新王となる。
しかし幼い王のため、政情は不安定で不穏な空気が漂っている。
叔父のランカスター公ジョン・オブ・ゴーントは、王位を要求する権利を持っていたが、摂政に甘んじなければならなかった。彼は王位を狙っているが、彼の秘密を握っている「富者(ダイヴズ)の息子たち」を恐れていた。秘密が露見すれば身の破滅だからだ。

貿易商で王侯貴族相手の金貸しのトーマス・スプリンガル卿が密室で毒殺され、執事のブランプトンが首を吊っているのが発見された。ブランプトンは、主人スプリンガル卿を毒殺したあとに自殺したようだ。
フォテスキュー首席裁判官は、検視官ジョン・クランストン卿と、クランストンの書記でドミニコ会修道士アセルスタンに、事件の調査に向かわせる。ランカスター公がこの事件に不審な点を感じているからだった。
アセルスタンは事件に不審な点を見い出す。スプリンガル卿は何らかの隠し事をしていたらしく、謎めいた言葉を口ずさんでいたという。
そして第三、第四の事件が起こる!スプリンガル卿の隠し事と、謎めいた言葉の意味は?犯人は誰、目的は何なのか?

********************

幼王リチャード二世即位後の、不穏な気配濃厚の中世ロンドン・シティを舞台にした、アセルスタン修道士シリーズ第1巻。
中世の修道士が登場するミステリーに、エリス・ピーターズの『修道士カドフェル・シリーズ』があるけど、カドフェル・シリーズはどちらかといえば牧歌的な雰囲気で人情味があった。一方、本作は都市部の汚濁と悲惨さをリアルに描き、事件とその背後には政情の不安定さが反映しているようです。

恰幅のいい肥満体で酔漢だが権力者を嫌いで、見た目とは裏腹な鋭さと敏捷さを発揮するクランストン。弟殺しの償いのため自治区の貧しい教会と教区民に仕え、観察力を持ち論理的整合性を求める青年アセルスタン托鉢修道士。
両者ともに心に痛手を負っていて、一人は酒に、一人は神と民に奉仕あるいは逃避する。

個人的に読み応えがあったのは、ロンドン・シティの描写。
成長を続けながらも全体的に混沌としており、インフラが整備されておらず、衛生観念に欠け、極度に貧富の差が激しい。これではペストや伝染病、犯罪が蔓延するのもわかるなぁと思うほど。
貧しい者はとことん貧しく、罪と知っていても食べるために罪を犯さざるを得ない。上流階級による欲絡みの殺人がある一方、理不尽な行きずりの殺人に巻き込まれる人がいる。葬式代に事欠く人には、近隣の者が費用を出し合う。

アセルスタンは貧民に混じり、彼らの生活を向上させたいと願う。彼は上流階級と貧民区を行き交う。
アセルスタンはその無欲さによって、欲得に捉われずに王侯や上流階級の人々を客観的に判断することができるようだ。しかし彼は聖人君子ではない。女性への関心を捨て切れない、いまだ迷いを抱いている青年なのだ。でも、模範的な青年という感じで個性が弱いかな。

最後にチラリと見せてくれる、幼いリチャード王の素顔が印象的で、今後リチャードがどう関わってくるのか気になるところ。まだシリーズ1巻なので、歴史小説としての本領発揮はこれからという感じでした。
ミステリーとしては、毒殺のトリックはいただけない。発想が別シリーズの『白薔薇と鎖』と同じじゃ・・・。この作者、トリックがちょっと。無理にトリックを付けなくてもいいのでは。
また、ラストは淡々とした感じがするので、もうひと捻り独創性か余韻がほしかった。シリーズは順次刊行される予定だそうなので、次巻に期待したいです。(2006/10/13)

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