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赤き死の訪れ/ポール・ドハティー

[アセルスタン修道士シリーズ]赤き死の訪れ
ポール・ドハティー

My評価★★★☆

訳:古賀弥生,解説:千街晶之
創元推理文庫(2007年9月)
ISBN978-4-488-21903-1 【Amazon
原題:The House of the Red Slayer(1992)


14世紀のロンドンを舞台とする歴史ミステリーのシリーズ2作目。
1377年12月、寒波の最中のロンドン。ロンドン塔の城主ラルフ・ホイットン卿が殺された。 シティの検死官ジョン卿と、書記のアセルスタン托鉢修道士は現場へ向かった。

ホイットン卿は塔の居室で殺害されたが、ドアには鍵がかけられ、外には見張りがいた。しかし部屋の窓は開いていた。
卿は数日前に届いた手紙に怯えていたという。手紙には三本マストの船の絵が描かれていた。そしてビスケットのような胡麻のシードケーキも届けられていた。これらは何を意味するのか?

さらに事件が起こった!ホイットン卿と同じ内容の手紙を受け取った者が、次々に死んでいった。誰もがホイットン卿と関わりのある者たちばかりで、彼らは十字軍時代の仲間だった。彼らの過去に何か秘密があるのだろうか?

********************

ロンドン塔で起こった一見不可能と思われる連続殺人事件。アセルスタンとジョン卿は寒波で凍死したり刑死したりと、死や不満が充満し不穏な動きのあるロンドンを奔走。しかし、各々悩み事を抱えているために足並みが揃わない。
アセルスタンは、教会の墓地から遺体が盗まれる事件が立て続けに起こっていることに頭を抱えていた。黒魔術師の仕業ではないのか?また、もうすぐやってくるクリスマスを一人で過ごすことに孤独を感じ、やるせない想いでいる。
前作では温和なだけで面白みのないアセルスタンだったけど、今作では悩んだり喜怒哀楽など人間味が出て存在感が増してますね。
一方のジョン卿は、最愛の妻モードの不審な言動に浮気ではないかと悩む。豪快ながらも、性格はなかなか不器用で繊細な様子。

二人の性格がハッキリ書き分けられて人間味が出てきたことと、別件の事件が絡むこと、さらには時代背景もあいまって、だいぶ面白味が出てきました。前作より面白かった。
トリックはズバ抜けたものではなく、どちらかといえば他愛無いけれども、この時代ならばこういうものかなぁ。時代を考えれば、変に凝ったトリックよりも、このほうがいいのかもしれない。でも、私としては無理に完全犯罪にしなくてもいいと思うんだけど。

前作もそうだったけれど、有産階級よりも、無産階級の人々とその生活に焦点をあて、歴史書には残らない人々とロンドンの姿が描かれています。さらに作者は、アセルスタンに人間が人間を嘲ることの不可解さについて呟かせる。
そのような作者のスタンスが、この作品の歴史性ゆえなのか、作者の性質に由来するのかはまだ判然としないけれど、ジョン卿を見ると後者ではないかな。

物語の時代背景に、有産階級に対する民衆の不満が高まってゆく様子が書かれていて、教区民を大切にするアセルスタンは身の処し方を考えているんです。
解説によれば、1381年にロンドンで『ワット・タイラーの乱』といわれる農民による反乱が起きたのだそうです。
とすれば、このシリーズはいずれその反乱に触れることになるのかもしれない。史実を踏まえながら時系列に沿って、物語が進んでゆくのだろう。
その場合、国王勅任の検死官ジョン卿は微妙な立場になるのでは。ジョン卿の書記をしているアセルスタンは、ジョン卿と民衆との狭間に立たされるのではないのかな。
などとつらつら想像してみると、歴史物の好きな私としては、これから面白くなってきそうな気がしてます。(2008/1/4)

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