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夢のなかの夢/アントニオ・タブッキ

夢のなかの夢
アントニオ・タブッキ

My評価★★★★★

訳:和田忠彦
青土社(1997年11月新装版)
ISBN4-7917-5599-5 【Amazon
原題:SOGNI DI SOGNI(1992)

目次:覚え書/建築家にして飛行家、ダイダロスの夢/詩人にして宮廷人、ブブリウス・オウィディウス・ナーソの夢/作家にして魔術師、ルキウス・アプレイウスの夢/詩人にして不敬の人、チェッコ・アンジョリエーリの夢/ 詩人にしてお尋ね者、フランソワ・ヴィヨンの夢/作家にして破戒僧、フランソワ・ラブレーの夢/画家にして激情家、カラヴァッジョことミケランジェロ・メリージの夢/ 画家にして幻視者、フランシスコ・ゴヤ・イ・ルシエンテスの夢/詩人にして阿片中毒患者、サミュエル・テイラー・コウルリッジの夢/詩人にして月に魅せられた男、ジャコモ・レオパルディの夢/ 作家にして劇評家、カルロ・コッローディの夢/作家にして旅行家、ロバート・ルイス・スティヴンスンの夢/詩人にして放浪の人、アルチュール・ランボーの夢/作家にして医師、アントン・チェーホフの夢/ 音楽家にして審美主義者、アシル=クロード・ドビュッシーの夢/画家にして不幸な男、アンリ・ド・トゥルーズ=ロートレックの夢/詩人にして変装の人、フェルナンド・ペソアの夢/詩人にして革命家、ウラジーミル・マヤコフスキーの夢/ 詩人にして反ファシスト、フェデリコ・ガルシア・ロルカの夢/他人の夢の解釈者、ジークムント・フロイト博士の夢/この書物のなかで夢見る人々


タブッキの愛する芸術家たちがみている夢の断章群。参考までに目次を掲げてみました。
難しくはなくとても読みやすいのだけれど、各芸術家に関する予備知識は多少なりとあったほうがいいです。既知の芸術家がいれば各々夢の断章の意味がわかると思います。でもまったく知らなければ、ナンセンスな夢語りで終わってしまう可能性があるかも。
私はこの作品を物語としてではなく(現に物語の形式になっていないものもあります)、実験的なテクスト群として読みました。「夢」というものは物語ではないのだから。

作者は『覚え書』で、残念なことにこの書物のなかでわたしが語る芸術家たちは、かれらの精神の夜半の旅の軌跡をわたしたちに残してはくれなかった。文学の力をかりて、その失われたものたちを補うことで、なんとかそれを埋め合わせてみたいという誘惑はおおきい。(中略)願わくば、これらの物語があるがままに読んでもらえますように(p13)と著しています。
そう、この作品は書かれてあるがままに読まなければいけない。ある意味、それは正しい。しかし、そこに作者のロジックがある。

精神の夜半の旅・・・。この旅こそが、芸術家を真に芸術家たらしめんとしたら?夢こそが創造の源であるのかも。
これらの夢という形の断章は、タブッキが自分の愛する芸術家たちをどう捉えているか、いわば批評でもあると思います。夢から各人の人物像と芸術の在りようが浮かび上がるという巧妙さ!
『この書物のなかで夢見る人々』は芸術家たちのプロフィールで、これを読んでこそ各夢の断章の意味が通じるように思いました。

三人称で語られていることがミソ。語り手は誰なのか、誰の視座で語られているのかがポイントなところはタブッキらしい。
三人称での語りは、極論すると各芸術家の「わたし」という存在は、単独では存在し得ないということではないだろうか。誰かに語られることで認知され、初めて存在する/したこととなる。もしもその芸術家ないし芸術について唯一人も語る人がいなかったなら、彼と芸術について知る人もない。語りってなんなのだろう?
さて、ダイダロスという神話上の人物から夢が生まれたとする。そして夢の解釈(もしくは分析)者フロイトによって、夢は夢でなくなる。全体の構造は閉ざされている。これを円環と考えると、解釈された夢群から新たな夢が始まるということではないのかな。しかし新たな夢は、生まれた時点では存在し得ない・・・。

ペソアの章で、とても気にいったフレーズがあったんです。
ペソアに向かって50歳ぐらいの女が、草のようだったわたしを誰も引きぬいてはくれなかった(p98)と言うんですよ。詩的な深い表現に感嘆しました。(2001/9/24)

追記:2013年9月、岩波文庫化【Amazon

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