スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

ヒッポリュトス/エウリーピデース

ヒッポリュトス パイドラーの恋
エウリーピデース

My評価★★☆

訳・解説:松平千秋
岩波文庫(1959年6月)
ISBN4-00-321061-1 【Amazon
原題:ΙΠΠΟΛΥΤΟΣ(前5世紀)


女神アプロディーテー(別名キュプリス)は、ヒッポリュトスを罰するためにパイドラーに白羽の矢を立てた。ヒッポリュトスが愛の喜びを拒否して純潔を守り、アプロディーテーを呪わしく思い、女神アルテミスを崇めているからだった。

テーセウスの妻パイドラーは、義理の息子ヒッポリュトスに恋をしたことで、気鬱の病になってしまった。貞淑な妻で子どもたちの母親でもあるパイドラーにとって、この恋は決して口外できず、成就してはならぬもの。
乳母はパイドラーの悩みを聞き出し、パイドラーに良かれと思い、ヒッポリュトスに誰にも口外しないようにと釘を刺し、パイドラーの気持ちを伝えてしまう。
ヒッポリュトスは憤激し、パイドラーを激しく非難。パイドラーは自分と子どもたちの名誉を守ろうと自決する。しかし、自分を追い詰めたヒッポリュトスに一矢報いらんがため、彼に襲われたと書き遺す。

パイドラーの死を知ったテーセウスは、三度の願いを叶えてくれるという父ポセイドーンとの約束によって、ヒッポリュトスの死を願う。
トロイゼーンから追放されたヒッポリュトスだったが、瀕死の状態でテーセウスの下へ担ぎ込まれた。しかし、いまだテーセウスの怒りは鎮まらない。
そこへ"機械仕掛けの神(デウス・エクス・マーキナー)"アルテミスが現れ、テーセウスは真実を告げられる。

********************

エウリーピデース(前485/4~406)はアイスキュロス、ソポクレースと並ぶギリシャ三大悲劇詩人。
解説によると、エウリーピデースは『ヒッポリュトス』を前428年に上演。このときはパイドラーが夫の不在時、積極的にエウリーピデースを口説き落とそうとする話だったそうです。これが不評で、その後に改作して上演されたのが本作。

ヒッポリュトス伝説はアテーナイ王家にまつわるそうで(テーセウスはアテーナイ王)、その発祥地をトロイゼーンとするのが一般的な見解らしい。
ヒッポリュトス信仰とは、婚礼を前にした娘が惜別の想いをこめて髪を切り、それを純潔の守護神に捧げることだそうです。トロイゼーンの半身祭儀に由来するともいわれるのですが、それはヒッポリュトスが冥界から帰還することに因るのかも。
ヒッポリュトスの伝説にはまだ続きがあり、一旦は冥界に下ったが医神アスクレーピオスによって蘇生するんです。私としては、冥界下りとそこからの帰還の物語を読みたいのですが、まずは発端を知るために本作を読んでみたわけ。

本作はテーセウスがパラースを討ち取った後に穢れを祓うため、妻子と共にパンディーオン(アテーナイ)からトロイゼーンへやって来たところから、ヒッポリュトスが最期を迎えるまで。
ギリシャ悲劇は読みようによっては複雑にも陳腐にもなるので難しい。様々に解釈できるからこそ、現代まで読み継がれているのかも。そこに人間性についての本質的・普遍的なものがあるのでしょう、たぶん。
しかし機械仕掛けの神に頼って問題を収束させるのは、安易なんじゃ。よく言えば、人間には自分自身にも計れない限界あるいは未知の部分があり、その領域は人智の及ばない部分あるいは制御不能として、神に委ねるしかないのかも。
「恋」という理性では制御できないもの。恋は人を幸せにするが、その情念はときに判断を狂わせ身を破滅させる。英雄テーセウスも例外ではなく、ヒッポリュトス憎きあまり理性を失ってしまうんですね。私に言わせれば、みんな箍が外れやすい。
ただ、パイドラーにしろテーセウスにしろ、その感情はとても人間らしい。市井の人間のよう。

以下、登場人物についての覚書。
○テーセウスはアイゲウスとアイトラーの子であるが、二人が契った同夜にポセイドーンがアイトラーに近寄ったため、ポセイドーンの子ともいわれる。
テーセウスはミーノタウロスを退治して、アリアドネーを連れてクレータを去る。後に捨てられたアリアドネーは、ディオニューソスの妻となった。

○パイドラーは、牡牛を愛したクレータ王ミーノースの妃(ミーノタウロスの母親)パーシパエーの娘の一人で、アリアドネーの妹。

○ヒッポリュトスの母親は、テーセウスの先妻ヒッポリュテー(アンティオペー)で、彼女はアマゾン族の出身だった。

パイドラーはパーシパエーの娘であることから、母親を反面教師として貞淑にこだわるのでは。そんな彼女だからこそ、ヒッポリュトスにふられたときの激しさがわからなくはない。
アテーナイ王家は、ヒッポリュトスが亡くなったことでパイドラーの子どもたち、つまりクレータ王家の血筋が継ぐことになるんですよね。そう考えると、この作品はミーノタウロス退治から始まった因縁の物語のように思えてくる。(2007/7/8)

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへにほんブログ村 本ブログ 海外文学へ

スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

H2

Author:H2
My評価について
=1ポイント
=0.5ポイント
最高5ポイント

最新記事
カテゴリ
最新コメント
最新トラックバック
FC2カウンター
検索フォーム
リンク
QRコード
QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。