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黒い天使/アントニオ・タブッキ

黒い天使
アントニオ・タブッキ

My評価★★★★☆

訳・解説:堤康徳
青土社(1998年12月)
ISBN4-7917-5680-0 【Amazon
原題:L'ANGELO NERO(1991)

目次:注記/何とは言えない何かによって運ばれる声/夜、海あるいは距離/「ふるいにかけろ」/ニューヨークの蝶の羽のはばたきは北京に台風を起こすことができるか?/石のあいだを跳ねる鱒は あなたの人生をわたしに思い出させる/新年


何とは言えない何かによって運ばれる声
街中で拾った言葉の断片を組み合わせる私。カフェ『ダンテ』に座っていたとき、ふいにメッセージが聞こえた。メッセージは、いままで私に言えなかったことを、君は知るべきだと言う。声の主を探していた私は、いつしかイザベルのことを思い出していた。

新年
母さんの寝室には軍服を着た父さんの写真があった。
ぼくの記憶には、夜更けに誰かを地下室へ連れて行く兵士たちの声があった。記憶にある声の主は父さんなのか?母さんは何も語らない。まるで父さんなど存在しなかったかのように・・・。ぼくは地下室の秘密を探ろうとする。

********************

タブッキ作品を理解するためには必須の短篇集だと思います。本書を読むのは、主要な作品を一通り読んだ後のほうがいいです。ただ、物語を純粋に楽しめるタイプの作品群ではないですね。

全篇を読むと「黒い天使」とは何かということが朧げながら浮かんでくる。 訳者解説によると、黒い天使はダンテの『神曲』(地獄篇第23歌)に登場するそうです。
神曲では、神に反逆した熾天使の側についた悪しき天使たちを「黒い天使」といい、神の側についた良き天使たちを「白い天使」と呼ぶ。どちらにもつかなかった中立の天使たちは、勇気を持って決断しなかったために罰せられ、色のない「中立の天使」と呼ばれるとか。中立の天使は天国にも地獄にも属せない。ために彷徨う。
『何とは言えない何かによって運ばれる声』で主人公を導く声があるのですが、その声の主が黒い天使なんですよ。タブッキの黒い天使は、神曲の「中立の天使」に相当するのでしょう。
黒い天使はどこからやってきたのか?どこに存在するのか?これが一連のタブッキ作品におけるキーポイントになるのではないかな。タブッキ作品の謎めいた部分は、黒い天使という存在を充てることで理解できるような気がするのだけれど。

この短編集では過去への回想という特徴が際立っています。それはタブッキの言う、「ある原因の結果ではなく、あべこべに、あらかじめあった結果の遅れてきた原因」(p165)、訳者いうところの「歴史の可逆性」かと。結果から原因を求めたり、反芻するときに黒い天使が現れるかも。
本書や『インド夜想曲』から『レクイエム』までの作品を読むと断片的な印象が拭えないのですが、それは結果から原因を探る過程において避けようのない欠損部分を、そのまま欠損という形で表すための手法ではないかと思えてくるんです。
例えば人間の記憶にみられるような不連続性を、強引だけれど、時間に包含される歴史や社会、政治に置き換えてみる。元々が不連続なため断片的にならざるを得ないのではないでしょうか。全ては不連続なのだ、そう知ることが肝要なのではないでしょうか。(2001/12/6)

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