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ダマセーノ・モンテイロの失われた首/アントニオ・タブッキ

ダマセーノ・モンテイロの失われた首
アントニオ・タブッキ

My評価★★★★

訳:草皆伸子
白水社(1999年3月)
ISBN4-560-04667-0 【Amazon
原題:LA TESTA PERDUTA DI DAMASCENO MONTEIRO(1997)


ポルトガルのポルトで首なし死体がみつかった!
リスボンの二流新聞記者の青年フィルミーノは、戦後ポルトガル文学についての論文を進めたかっただが、部長の指示で嫌々ながらポルトへ向かう。
フィルミーノは、第一発見者であるジプシーのマノーロから新情報を得た。マノーロは死体が着ていたTシャツのロゴを見ていたのだ。しかし警察の発表では、死体は上半身裸だった。

フィルミーノは被害者が、貿易商見習いのダマセーノ・モンテイロであることを突き止める。事件には目撃者がいたのだが犯人が軍の関係者のため、迂闊に証言すると目撃者の命が危険に晒される。目撃者に裁判で証言させるためと、モンテイロの遺族が裁判を起こすために、フィルミーノは弁護士を必要としていた。
フィルミーノはペンションの女主人ドナ・ローザの紹介で、貴族で弁護士のドン・フェルナンド通称ロトンに会う。
ロトンは、この国ではこれまで軍関係者が起こした事件は、みな不起訴になったと言う。なかには軍事裁判へ持ち込まれることもあると言う。そうさせないためにロトンはフィルミーノに指示し、マスコミで世論に訴える。

********************

1996年5月に実際に起こった事件をモデルにして書かれた小説。ただし被害者は女性。
ポルトガルを舞台にしたサスペンス・タッチの作品。弁護士のドン・フェルナンドが探偵役なら、フィルミーノは探偵の助手といったところ。
しかし犯人探しが主題ではないんです。犯人が割れた、そこから先が本題。だから探偵小説ではないのですが、法廷ものというのともちょっと違う。政治と司法と軍の在り方、ポルトガルの下層社会に生きる人々について、人権的・個人の尊厳という意味合いにおけるポルトガルの暗部が描かれています。

タブッキにしてはストレートな作風が意外でした。幻想的な描写は一切ないので、誰が読んでも途惑うことはないでしょう。
とはいえ、やはりタブッキ的な作品。タブッキの好きなポルトガルを舞台にして、フィルミーノはガイドブック片手にポルトの町を歩く。観光案内的な町の描写や食べ物、フェルナンド・ペソア、ドン・フェルナンド論じる個についてなど、これまでの作風との共通項が見受けられました。

物語の結末は書かれていません。それは、たぶん簡単に解決できる問題ではなく、いまでもポルトガルに内在している社会問題だからではないかと思われます。
そんなポルトガルの暗部に、ドン・フェルナンドとフィルミーノは立ち向かい続ける。どんなに社会的に侮蔑や冷遇されている人々であっても「何よりもまず一人の人間である」と言い切るドン・フェルナンドに敬服。真の主役はドン・フェルナンドかもしれない。(2003/10/23)

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