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雨の匂いのする沙漠/G・P・ナブハン

雨の匂いのする沙漠
G・P・ナブハン

My評価★★★★★

訳:小梨直
白水社(1995年4月)
ISBN4-560-04043-5 【Amazon
原題:The Desert Smells Like Rain(1982)


アリゾナとメキシコの国境地帯のソノラ沙漠に住む、トホノ・オォトハム族(かつてはパパゴ・インディアンと呼ばれていた)に関するエッセイ集。写真有り。エッセイ集と呼ぶのは適切ではないかもしれない。学術的専門書ではなく、レポートとエッセイの両方を兼ね備えた作品。著者のゲイリー・ポール・ナプハンは、植物学者であり土地固有の種子の保護活動家でもあるのだそうだ。

訳者あとがきに「さばく」というと、われわれはふつうラクダのいる砂丘をすぐに思い浮かべるが、その特徴は「一面砂であること」ではなく何よりも「雨の少ないこと」であり、それゆえ研究者たちは「沙漠」と表現するらしい。(p176)とあるが、沙漠=砂地ではなく、両者は異なるのだそうだ。雨がとても少ないから部外者には荒涼とした大地のように見えるが、実は植生の豊かな土地だという。
1937年、トホノ・オォトハム族が住んでいた土地は政府によって野鳥保護区域の国立公園となり、この地で暮らしていた彼らは追い出された。その結果、彼らのいたころは豊かだった土地は痩せ、植物は枯れ、野鳥が減った。トホノ・オォトハムの村で出会う鳥のほうが、自然保護区域よりも多い。
土地を耕して養分を与える人がいなくなったために、土地は痩せて植物が枯れ、植物をエサとする鳥や動物が減った。これは自然と人間と動植物が、どのように関わって生存しているかという好例だと思う。政府はそのことに気づかなかった。しかし自然に添って暮らしてきたトホノ・オォトハム族は、経験から知っていたのだそうだ。

近年、トホノ・オォトハム族は保留地にもたらせれる食糧援助によって、飢えることはなくなったが糖尿病で太った人が多く見られるという。伝統的な食生活から、配給された小麦粉やインゲン豆、コーヒー、塩、砂糖、缶詰などに変わってしまったからだ。
それ以前の食生活は食糧の手に入る雨季に、採取や狩猟によって食べれるときにたくさん食べ、食糧の手に入らないときは飢えていた。そのため食物のエネルギー摂取量が高く、体内に蓄積されたエネルギーで次の雨季まで過ごす。体質がその地に適応したサイクルになっているという。そのサイクルが崩れて常に満腹状態になってしまったために、糖尿病になったと考えられている。食糧事情だけではなく、ライフスタイルの変化も理由に挙げられている。
ちなみに研究の結果、彼らの伝統的な食物である野草は、時季によって採取量にバラつきがあっても、品種が豊富で栄養のバランスが取れているという。地下水を汲み上げて灌漑しても、年に数回しか降らない雨のほうが多様な養分を含んでおり、植物の生長を促進し格段に栄養価が勝っているのだそうだ。また、アルカリ濃度の高い地下水は、土地を痩せ衰えさせ、やがて耕作不能にしてしまう可能性がある。

タイトル『雨の匂いのする沙漠』とは、あるとき著者がトホノ・オォトハムの子どもに「沙漠はどんな匂いがするのか?」と訊いたら、「雨の匂いがする」という応えが返ってきたことから付けたのだそうだ。雨の降らないのが沙漠なのに、なぜ雨の匂いがするのだろう?不思議じゃないですか?実はこの言葉の背景に、トホノ・オォトハム族固有の考え方、生活様式・文化があるという。
興味深い事柄がたくさんあって惹きつけられる。それはソノラ沙漠やトホノ・オォトハム族の生活・文化が珍しいからだけではなく、彼らの抱える問題、彼ら特有の生き方や文化が国や民族を越えて、人間本来の生き方の思惟に富んでいるからだ。
豊かさとは何だろう?そして、これまで多くの人々が追求し、私たちが享受してきた「合理化」について考えさせられた。(2003/2/26)

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