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プークが丘の妖精パック/ラドヤード・キプリング

プークが丘の妖精パック
キプリング(ラドヤード・キプリング)

My評価★★★☆

訳・解説:金原瑞人・三辺律子
光文社古典新訳文庫(2007年1月)
ISBN978-4-334-75121-0 【Amazon
原題:PUCK OF POOK'S HILL(1906)


夏至の前夜、牧草地の一角でダンとユーナの兄妹が野外劇場で演じる『夏の夜の夢』の練習中に、小さな生き物を呼び出してしまった!?それはオールドイングランドの最も古いこの丘の麓、プークが丘の住人パックだった!
パックは魔法で古の<丘の住人>たちを呼び出し、彼らに子どもたちへ知られざるイングランドの歴史を語ってもらう。
後に神々の鍛治屋ウェイランド・スミスと呼ばれる異教の神ウィーランドは、見習い僧に剣を贈った。剣は友情によって、サクソン人と戦ったリチャード卿の手に渡る。引退したリチャード卿たちは聖地巡礼のため船に乗るが、デーン人に捕まってしまう。デーンの船は嵐に遭い漂流し、とある島へ辿り着くが、島には悪魔たちがいた!

リチャード卿の次に、古代ローマの第三十軍団第七隊の百人隊長パルネシウスが現れた。パルネシウスは友人パルティナックスと、ブリテンのピクト人の土地で、城壁(ハドリアヌスの長城)の守備に就いていた。将軍マクシムウスの信頼篤い二人は、マクシムスがゴールの地を平定し皇帝の座に就くまで、最小限の兵備で城壁を死守するが・・・。
そして図面引きのハルや、イングランドの民の立法者となったユダヤの選ばれし者カドミエル。ダンとユーナ暮らすペベンシー平野を舞台とした伝説の剣、冒険、財宝、宝と法、時代の波に揉まれながらも己を貫く人々の信念の物語。

********************

ラドヤード・キプリング(1865-1936)はイギリスの作家・詩人。1907年にノーベル文学賞を受賞。
この作品は本邦初紹介なのだそうだ。なぜ今まで翻訳されなかったのかと思う。その理由として訳者はあとがきで、イギリスでは児童書として扱われているが、日本で児童書として扱うには歴史的背景が日本の子どもになじみがないからだろう、と述べている。
確かに日本の子どもには、イギリスの歴史や人名、社会的身分などを理解することは難しいと思う。けれども、この作品は大人が読んで充分に堪能できる佳品。私としては大人にお薦めしたい。そのためにこの文庫で出版したのだろうけど。
ファンタジーや神話の好きな人よりは、むしろ歴史の好きな人向けだと思う。ゆったりとしたテンポで語られているので、こちらもゆったりとした気持ちで読みたい。

訳者あとがきによると、物語の主な舞台となっているペベンシーは、イーストサセックスの南東の海岸沿いにある小さな村だが、イギリス史に幾度か登場する重要な拠点なのだそうだ。ペベンシー城は、元はローマ支配期にローマ人によって建立された砦だという。
ペベンシーはダンとユーナの時代には平野だが、元々は湿地(マーシュ)で、湿地の民と、この場所に気にいっているフェアリー<丘の住人>たちが棲んでいた。丘の住人たちがイングランドを去った後に唯一人残ったのが、最も古い者パックだった。
丘の住人たちが、イングランドを去らざるを得なくなった事情も語られている。彼らが去ったことで一つの時代が終わり、新たな時代を迎える。異教の神が鍛えた剣は、財宝をもたらし、財宝はやがてイングランドに法と平和をもたらす。数人の人物によって語られる話は、さりげなく繋がっているのだ。
こうして読んでみると、イングランドは良くも悪くも他民族との関わりが強く、そのため戦いの歴史となっているんだなあと思わざるを得ない。

訳者によれば、キプリング作品を愛していたサトクリフは、パルネシウスらの物語に心躍らせたという。パルネシウスは歴史のうねりに飲み込まれつつも、己に忠実に生きようとする。私も古代ローマ時代のパルネシウスの物語がいちばん好きだな。読んでいてワクワクするんだ。(2007/9/14)

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