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燃える平原/フアン・ルルフォ

燃える平原
フアン・ルルフォ

My評価★★★★★

訳:杉山晃
書肆風の薔薇/白馬書房(1990年11月)
ISBN4-89176-240-3 【Amazon

収録作:おれたちのもらった土地/コマドレス坂/おれたちは貧しいんだ/追われる男/明け方に/タルパ/マカリオ/燃える平原/殺さねえでくれ/ ルビーナ/置いてきぼりにされた夜/北の渡し/覚えてねえか/犬の声は聞こえんか/大地震の日/マティルデ・アルカンヘルの息子/アナクレト・モローネス


フアン・ルルフォ(1917-1986,メキシコ)はその生涯に、短篇集の本書『燃える平原』(1953年刊)と長篇『ペドロ・パラモ』(1955年刊)の2作しか遺さなかったという。もう一つ『金の軍鶏(しゃも)』という映画(1964年に上映)のプロットを書いたそうだが、これは作者自身が小説ではないから例外としている。

ルルフォの少年期1920年代は、まだメキシコ革命の混乱が続いており、各地で戦闘が繰り広げられていた。農地は戦場と化し、家や農場は焼き払われた。ルルフォ家の農場も例外ではなかった。彼の家族は殺され、父親の一族は根絶やしにされたという。メキシコでは人間も大地も荒廃し殺伐となった。それらのことが本書に色濃く影響している。

当初の目的を失い混乱し、戦うことが目的となった革命。その混乱した状況に携わる人々、被害を蒙った農民、荒廃しきった死の大地、飢えと貧困・・・。その時代に生きた人々が描かれている。贅肉を削いだストイックな作風に感傷の入る余地はない。感傷や自由な解釈を拒んでいるかのようだ。
だからと言って難解なのではなく、読みやすくわかりやすい。訳にもよるのかもしれないが、ユーモアもある。文章上において誤読の余地はないと思うが、その意味するところはとても深い。ために生半可な感想は書けない。要するに、私には感想を言葉として文章化できないということだ。仮に言葉にできたとしても、この作品を歪めてしまうような気がする。
ただ私がもっとも強く感じたのは、非常に困難な状況であれ、人々は「生きたい」と希求していること。また性格にもよるのだろうが、状況が人の生き様を歪めてしまう。ともあれ21世紀のいま、そして今後とも読み継がれるべき作品だと思う。

タルパ
全身にできた腫れ物が膿んで死に怯えるタニーロは、タルパへ行って聖母に癒してもらいたいと願う。妻のナターリアとタニーロの弟は、タニーロに懇願されてタルパへ連れてゆく。徒歩の旅だ。
旅の途中でタニーロはしんどくなって引き返そうとするが、弟とナターリアはなだめすかして、強引にタルパへ向う。実は弟とナタリーアはデキており、心中密かにタニーロの死を願っていた。タニーロはタルパで死んでしまうのだが・・・。

マカリオ
池のほとりに座って、カエルが出てくるのを待つマカリオ(おそらく少年)。マカリオはおばさんと暮らしている。二人の食事を作るのはフェリパだ。マカリオは気違いだと思われて、石を投げつけられる。だが彼自身は気違いだと思っておらず、いつも腹を空かしている。
おばさんは、マカリオは地獄へ墜ちると言う。彼は悪魔に地獄へ連れて行かれることを恐れていた。彼から恐れを取り除き、安心させてくれるのがフェリパだった。

燃える平原
革命軍は一時平和を勝ち得たが、政府軍によって散り散りになった。革命軍のペドロ・サモラ隊はゲリラ戦を展開し、牧場や農地を襲撃して火を放つ。ピチョン(一物)はペドロ・サモラに心酔していた。だが政府軍によって革命軍は徹底的に叩き潰される。
生き残った革命軍は方々へ個々に逃走するが、家畜を殺して火を放った彼らを匿ってくれる人はいなかった。戦はやめたと宣言しても、彼らがやったことを消せるものではない。

アナクレト・モローネス
ルカス・カステロの家へ、盛りのすぎた10人の女が押し寄せてきた。アナクレト・モローネスを崇める、アムーラ修道会の女たちだ。どの女もかつてルカスが口説き肉体関係があった。
女たちの目的は行方不明となったアナクレトを天国に召されたものとし、彼を聖者の列に加えるべく請願することだった。そのためにはアナクレトに仕えたルカスに、アナクレトが行なった奇跡を証言してもらわなければならない。ルカスはずっとアナクレトと行動を共にしていたからだ。そしてアナクレトの娘を娶っていた。しかし、アナクレトに押し付けられた性に奔放な娘は叩き出したと言う。
ルカスはアナクレトのために証言するなんて真っ平。女たちを追い返すべく、あの手この手で彼女らの結束を切り崩しにかかる。アナクレトがいかに詐欺師だったか、女たちをたらし込んでいたかをばらす。次第に女たちは一人減り二人減り・・・。

備考)1991年、書肆風の薔薇/白馬書房は、『水声社』へ社名変更。(2003/2/10)

ペドロ・パラモ

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