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アイルランド幻想/ピーター・トレメイン

アイルランド幻想
ピーター・トレメイン

My評価★★★★☆

訳:甲斐萬里江
光文社文庫(2005年8月)
ISBN4-334-76157-7 【Amazon
原題:ALSLING and other Irish Tales of Terror (1992)

収録作:石柱/幻の島ハイ・ブラシル/冬迎えの祭り/髪白きもの/悪戯妖精プーカ/メビウスの館/大飢饉/妖術師/深きに棲まうもの/恋歌/幻影


アイリッシュ・ケルトの伝説・神話、民間伝承や歴史を題材にしたホラー短編集。
「なんだホラーか。興味ないなぁ」と思った人、ちょっと待って!たんなるホラーじゃないのだ。原題の『ALSLING(アシュリン)』とは「幻想(ヴィジョン)」という意味だそうで、オチは確かにホラーなのだけれど、全体的には幻想小説と言っていい。
アイルランド(ゲール)人の文化と歴史、民族性に立脚していることが最大のポイント。アイルランドの伝説・神話はもとより、「歴史」に重点が置かれており、歴史を背景として、民間伝承や神話が巧妙に織り交ぜられている。そうして、現代に生きるアイルランド人の姿が描かれている。主役は時代に関わらず、あくまでも人間だ。

物語のほとんどは、アイルランドについてあまり知識のない現代人の若者が、アイルランドの伝説や歴史に触れるという設定になっている。読む側は主人公とともに、次第にアイルランドの世界に踏み込んでゆく。そこには迫害された人々の歴史があり、その人々の哀しみが表現されている。
オチは英国の怪奇小説風あり、クトゥルー神話風あり。途中でオチの見当がついてしまうことも・・・。私としては何もホラーにしなくてもいいのではないかと思うのだが(特に「大飢饉」は。でもこの短編がいちばん好きかな)、作者は初めからエンターテインメントとして楽しんでもらえるように書いたのだそうだ。
なるほど。これが初めから徹底愁眉文学として書かれたのなら、読むと陰鬱な気分になってかなりしんどかったろうな。エンターテインメントだからこそ、最後まで読み通すことができたのだろうし、アイルランド史に格別の興味がなくても手に取ったのだろう。
ホラーが好きな人、ケルトの伝説が好きな人、アイルランド文学や歴史の好きな人と門戸を広くしていることも、アイルランド史に興味がなくても読めるようにするためかもしれない。難しい歴史書を読むより、本書を読んだ方がずっといいだろうな。

作者は本名ピーター・ベレスフォード・エリスといい、イギリス生まれだが、父親はアイルランド人、母親は南イングランド(現フランスのブルターニュ。5世紀にイギリスから移住したケルト人が開拓した地といわれる)出身のケルト系。アイルランドの伝説や歴史にとても詳しいと思ったら、高名なケルト学者なのだそうだ。本名で『アイルランド史』(論創社,1991年)が出版されているという。(2005/9/7)

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