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修道女フィデルマの叡智/ピーター・トレメイン

[修道女フィデルマ短編集]修道女フィデルマの叡智
ピーター・トレメイン

My評価★★★★

訳:甲斐萬里江,解説:村上貴史
創元推理文庫(2009年6月)
ISBN978-4-488-218119-9 【Amazon

収録作:聖餐式の毒杯/ホロフェルネスの幕舎/旅籠の幽霊/大王の剣/大王廟の悲鳴


7世紀のアイルランドを舞台に、法廷弁護士・裁判官の資格をもつ修道女フィデルマが難事件に挑むシリーズ。日本オリジナル短編集。これまで翻訳された2長編では、7世紀のアイルランドの世界をどっぷりと堪能できた。短編ではどうなのかなぁと思ったけれど、短編もいいですね。作家の力量のほどが伺える出来栄え。
趣向を凝らした作品がセレクトされており、どれも読み応え十分。ミステリーとしてもなかなかの手腕が発揮されている。アイルランド独自の世界観も十分に感じられる。長編を読もうかどうしようか迷っている人は、この短編集から取り掛かかるといいと思う。

聖餐式の毒杯(The Poisoned Chalice,1996)
ローマ滞在中のフィデルマが立ち寄った教会で、ミサが行われていた。だが、ミサの最中に聖体のワインを拝領した男が死んだ。ワインに毒が仕込まれていたのだ。犯人は今この場にいる誰かだ!フィデルマは修道院長の依頼を受け、犯人究明に乗り出す。
フィデルマが捜査を始めると、入り組んだ人間関係と、ぞれぞれの思惑が浮き上がる。そして犯行の目的が明らかに・・・。短編ながらも密度が濃く、ミステリーの王道をいく作品ではないかな。

ホロフェルネスの幕舎(At the Tent of Holofernes,1997)
幼なじみのリアダーンから、手紙で助けを求められたフィデルマ。二人は成人した後、別々の道を歩んだ。リアダーンは異民族のスコリアーと政略結婚させられだが、息子も授かって幸せに暮らしているはずだった。
だがフィデルマが到着すると、夫スコリアーと息子が殺害されており、容疑者としてリアダーンが捕らえられ、裁判にかけられることになっていた。フィデルマはリアダーンの弁護を務めるが・・・。
情に流されそうになりながらも、責務を果たそうとするフィデルマ。事件の真相が明らかになったとき、愚かしくも哀しい真実が。もしも自分に正直であったなら、と思わずにいられない。

旅籠の幽霊(Our Lady of Death,2000)
旅の途中、人けのない山道で猛吹雪に襲われたフィデルマは、ようやく旅籠をみつけて避難することができた。だが、旅籠の亭主と女房の様子が異様だった。夫婦は、女房の亡くなった前夫の悪霊に悩まされ、脅えていたのだ。フィデルマもまた悪霊に脅かされる。彼女は幽霊の正体を突き止めようとする。
この短編集の中では異色の作風で、『アイルランド幻想』のようなホラーぽさがある。ホラーというと語弊があるので、郷土色というべきか。シングの『海に騎りゆく者たちほか』の作品に近い。
だがこちらは超自然的なものではなく、フィデルマは幽霊の正体に取り組む。彼女は、悪とは人間の在り方にあると思っているからだ。この点が彼の作品に共通する人間性についての作家の考え方だと思う。話は変わるが、臆病ではあれども、最後まで善良な夫婦が微笑ましい。

大王の剣(The High King's Sword,1993)
アイルランド全土を統べるハイ・キングが疫病で相次いで亡くなり、新たなハイ・キングにシャルハナサッハが就く。即位の儀式には宝剣カラハーログが不可欠とされる。宝剣は聖堂内に保管されていたが、何者かに荒らされた。現場には、シャルハナサッハと大王候補を争って敗れた男アリールがいた。しかも、宝剣がみつからない。宝剣はどこへ消えたのか?
フィデルマは、即位の儀式までに宝剣を探し出すよう依頼される。即位の儀式までというタイムリミットが課せられるなか、犯人の巧みな偽装をフィデルマが打ち破っていく。
一種の知恵比べといった短編。二転三転し、読者の想像をいい意味で裏切っていく展開。一つひとつを解明し、除外していくフィデルマの明晰さと冷静な手順に、彼女の推理方法を知ったように思う。

大王廟の悲鳴(A Scream from the Sepulchre,1998)
『大王の剣』の3年後、<大集会>に出席するため、全土から王や族長、裁判官や弁護士が集まっていた。フィデルマも再び都タラにやってきた。だがその晩、異様な事態が発生。警邏中の戦士が、1500年間一度も開かれたことのない大王の墓所から、悲鳴がしたというのだ!
墓所を開けてみると、中で男が息絶えていた。男は、大集会に出席するために来ていた裁判官の長だった。なぜこの場所で?どうやって墓所に入ったのか?
オカルトぽく始まりながらもミステリー。死んだ裁判官の素行と家庭環境は、現代にも通じるのでリアルだ。しかし彼は哀れだ。
大修道院長とフィデルマは「貪欲さ」について語るが、貪欲さこそが、人が引き起こす諸々の事件における、大きな要因の一つだろう。一連の短編では、一部例外はあるけれど、貪欲・強欲さということが共通しているように思われる。(2009/7/27)

蜘蛛の巣
幼き子らよ、我がもとへ
+修道女フィデルマの叡智
蛇、もっとも禍し
修道女フィデルマの洞察
死をもちて赦されん

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