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聖ペテロ祭の殺人/エリス・ピーターズ

[修道士カドフェル・シリーズ4]聖ペテロ祭の殺人
エリス・ピーターズ

My評価★★☆

訳:大出健,解説:大津波悦子
現代教養文庫(1991年9月)[廃版]
ISBN4-390-13004-8【Amazon
原題:Saint Peter’s Fair(1981)


1139年7月30日、聖ペテロ前夜祭の前日。通行税をめぐって、町長の息子フィリップを旗頭とする青年たちと、入港する商人船との間でいざこざが起こった。
フィリップとブリストルの商人トマスがはずみで喧嘩となり、それがきっかけとなって桟橋は大騒動に。多くの青年たちは兵士に捕まって牢へ入れられたが、フィリップは逃走。翌朝、トマスの他殺体が発見され、フィリップが犯人とみなされた。

トマスの姪エンマは、ベリンガーとアライン夫妻の下に身を寄せる。祭りで当地へ来ていた貴族のコルビエール青年は、エンマに同情的で何かと彼女の元を訪れる。
フィリップは捕まったが、第二の殺人が起こった。釈放された彼は真犯人を突き止めようとする。カドフェルの睨むところ、犯人の狙いはエンマがトマスから預かった物にあるらしい。エンマはそれが何なのか打ち明けようとしない。その彼女に魔手が迫る・・・。

********************

今作は特に政治色が強く、それはそれでいいのですが、これまでのシリーズ内ではパワーダウンという感じ。ストーリーで悪いのではなく、ヒロインに魅力が感じられなかったんです。
エンマの言動がいかにも作り事めいており、良くも悪くも頑なで人間味が感じられませんでした。彼女が独断的なまでに優等生的な言動をするので、同情や心配する余地がなかった。毅然としつつ、ときにはホロリと弱さをみせてくれると、彼女の見方が変わったのだろうけど。
フィリップはエンマに惹かれるのですが、どこがいいの?いかにも取ってつけたようでわざとらしかった。

今作で魅力的な人物といえば、カドフェルが通訳として付いた、モールドから来た商人ロードリ・アプ・ヒウ。
何ものをも見逃さない彼は、どうやら只者ではない様子。ロードリが事件解明に直接関係してくれば、もっと面白くなったんじゃないかな。

備考)2003年7月、光文社文庫より『聖ペテロ祭殺人事件』刊行【Amazon】(2004/1/28)

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修道士の頭巾/エリス・ピーターズ

[修道士カドフェル・シリーズ3]修道士の頭巾
エリス・ピーターズ

My評価★★★☆

訳:岡本浜江,解説:大津波悦子
現代教養文庫(1991年5月)[廃版]
ISBN4-390-13003-X 【Amazon】
原題:Monk's-Hood(1980)


1138年12月、スティーブン王と女帝モードの内乱は続いていたが、シュールズベリからは危難が去った。ヘリバート修道院長はロンドンでの教皇使節公会議に出席するため旅立。ヘリバートが留守の間、修道院は副修道院長ロバートに委ねられた。
カドフェルは見習い修道士のマークを助手とし、平穏な日々を送っていた。
修道院にモーリリー荘園を寄進したボーネル一家が、院内の家作を借りて余生を送るべく引っ越してきた。ジャーヴァス・ボーネルは、妻と連れ子の少年エドウィン、下男のエルフリック、メイドのオールディスと暮らし始める。家には時折り、ボーネルの妻の娘婿の徒弟ミューリグ青年がやって来ていた。

ある夕、ご馳走にありついたロバート副院長は、料理をジャーヴァス・ボーネルに分け与えるべく届けさせた。ところが料理を食べた直後、ジャーヴァスは死んでしまう。カドフェルは現場に駆けつけるが、そのときボーネルの妻が、若かりし頃の恋人リチルディスであることを知る。
死因は料理に入った毒だった。その毒はカドフェルが調合し、彼の施薬所から盗まれたものだった。犯人にはジャーヴァスと不仲だったエドウィンが疑われた。
リチルディスから息子エドウィンを助けてくれるよう頼まれたカドフェルは、真犯人探しに奔走する。

********************

若かりし頃のカドフェルの恋人が登場!これでカドフェルの過去が明らかに?!と思いきや、案外にもそうはならない。
一つにはカドフェルが現行の自分に満足しているからであろうし、登場人物が現在を生きることに目を向けているからだろう。それは作者自身の性向でもあるのかもしれません。

読み手は『修道士の頭巾』(トリカブトのこと)というタイトルから、毒殺を扱った事件であることが読む前からわかっているわけですよね。しかし、誰が何のためにどうやってジャーヴァス・ボーネルを毒殺したのか?しかも衆人環視の中で。
ジャーヴァス・ボーネルと周囲の人間関係はうまくいっておらず、誰もが容疑者たり得る。それはジャーヴァスが尊大だということもあるけれど、対人関係に不器用だということにもよる。作者はジャーヴァスをまったくの悪人ではなく、人間味ある人物として描き出しています。こういったように人物造形に深みがあるから、エリス・ピーターズを好ましく感じます。
部外者から見れば、カドフェルも容疑者の一人という状況に置かれるなか、カドフェルは真犯人の探索に乗り出す。手がかりは意外な場所にあった!
こんな展開になるとは、イギリス作家によるイギリスを舞台とした歴史ミステリーならではでしょう。奥が深い。
カドフェルは真犯人を糾弾するのですが、罪を憎んで人を憎まず。人は弱く、如何ようにも揺れ動くもの。だからこそ罪を犯しても贖うことができるのでしょう。被害者よりも加害者の人権を尊重することがいいかは難題ですが、このシリーズの魅力の一つであると思います。

州執行副長官となったヒュー・ベリンガーが再登場。でも結婚すると人間が丸くなるのか、前作でのミステリアスさが消え、「いい人」になってしまったのがもの足りないなあ。ベリンガーには危険な男でいてほしかった。
出番は少ないけど長老アイヴァ・アプ・モルガンは印象的な人物で、そのうち再登場してほしい。
ヘリバート院長が留守の間、ロバート副院長は意気揚々と構えていた。なぜならヘリバートが解任させられ、ロバートが新院長に就任するかもしれないから。取らぬ狸の皮算用ですね。帰って来たヘリバートとロバートのやりとりが一興。ささやかな一矢を放つヘリバートの姿に、初めて親しみを持てました。

備考)2003年5月、光文社文庫より刊行【Amazon】(2003/12/3)

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死体が多すぎる/エリス・ピーターズ

[修道士カドフェル・シリーズ2]死体が多すぎる
エリス・ピーターズ

My評価★★★★

訳:大出健,解説:大津波悦子
現代教養文庫(1991年1月)[廃版]
ISBN4-390-13002-1 【Amazon
原題:One Corpse too Many(1979)


1138年、先王ヘンリーの死後から、先王の娘モードと従兄妹スティーヴンとの間で王位継承権を巡る争いが続いていた。スティーヴン王の軍勢はシュールーズベリへ進軍していた。
カドフェルは、戦禍を逃れて修道院へ来た少年ゴドリックを、見習い修道士の助手として預かることになった。
スティーヴン王の軍勢はシュールーズベリを占拠したが、モード勢の首謀者であるフィッツ・アランとエイドニーを捕まえることができないでいた。エイドニーの娘ゴディスは脱出できず、いまだ城下に潜伏しているらしい。
スティーヴン王側についたゴディスの婚約者ヒュー・ベリンガーは、スティーヴン王からゴディスの捜索を命じられる。だが、ベリンガーにはゴディスを探す独自の目的があった。

スティーヴン王の命によって、94人の敵兵が処刑された。修道士らは放置された死体を埋葬しようとするが、カドフェルが数えると95人の死体があった!?密かに殺された若者の死体が紛れ込んでいたのだ。殺されたのは誰なのか?また何のために?カドフェルは捜査を始める。
ゴドリックはケガを負った少年トロルドを発見する。トロルドは夜陰に紛れてフィッツ・アランの財宝を国外に持ち出す任務を帯びていたが、何者かに襲われたのだった。
カドフェルとゴドリックは、トロルドを匿い折りをみて脱出させようとするが、カドフェルの周囲にはなぜかいつもベリンガーがいた。
一人多い死体の謎と、フィッツ・アランの財宝の行方は!?

********************

実際に起こった内乱を背景に、戦況下で起こった事件という設定。内乱がなければ起きなかったであろう事件。
私としては内乱という歴史の一コマと、事件が密接に関わりあっている設定が良かった。別の時代に置き換えることができず「この時代この場所でしかあり得ない事件」、歴史が書割りでないところが好きです。
そして物語の柱となる謎が一つきりではなく、一人多い死体と財宝の行方という二つの謎を解くので読み応えがありました。
カドフェルは二つの問題を解決しなければいけない。そこに男女四人の恋の行方が絡む。これで面白くないわけがない。

今作では何と言ってもヒュー・ベリンガーの存在が際立ってますね。主役と言っていいぐらい。
戦下で刻々と状況が緊迫するなかでの、カドフェルとベリンガーの知恵比べ、と言うより騙し合いと言ったところ。ベリンガーをはじめは「いけ好かない奴」と思っていたのだけれど。
そして事件は意外な展開へ・・・。
一見して弱々そうで実は芯のシッカリしている貴族の娘アライン。反乱軍に加わった親兄弟を亡くした彼女は修道院へ身を寄せ、途惑いながらも必死で自立しようとする。その姿がけなげ。アラインの揺れる恋心の描写は女性作家ならではでしょう。(2003/10/6)

備考)2003年3月、光文社文庫より刊行【Amazon

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